私の教室では、幼児さんは5歳児年中さんが多いです。
もちろん3歳くらいからレッスンに来られる生徒さんもいますが、5歳頃から、親御さんのご希望だけではなく、お子さん自身が「ピアノを習いたい」と言い出されるようですね。
教える側からみても、年中さんくらいになると、こちらが言うこともよく理解できて一人でいろいろなことが出来るようになり、ものごとの善悪も分かるようになっているようです。
玄関で小さな靴をお行儀よくそろえて入って来るだけでも感動です!
うちの子が5歳の時、大丈夫だったかしら…? 心配です。
5歳児と言っても、4月生まれのお子さんもいれば12月生まれのお子さんもいて…幼児さんにとって数か月の違いは大人の何年分も違うのではないかと思うほど、個人差が大きいです。
私の娘も5月生まれと3月生まれで学年の始めと終わりの両極端…いろいろありました…。
それにやっぱりその子その子の成長の仕方があって、ゆっくりな子もいれば早い子もいて…得意なこと苦手なこともそれぞれで…同じ月齢でも同じ内容のレッスンをしているわけではありません。
何人かレッスンの様子をご紹介します!
4月からピアノを始めた年中さんのYちゃんとWちゃんは、真ん中のドを中心に右手の「ドレミファソ」左手の「ドシラソファ」はもうスラスラです。最初の難関である右手の「ソラシドレ」を経て、今は、右手は高いドまで、左手は低いドレミファソを使った曲に挑戦しています。
『うたえる!ひける!ピアノ曲集』を使って、知っている曲をどんどん弾いています。
今は、秋にぴったりの「どんぐりころころ」や「大きな栗の木の下で」などを楽しんでいます。
8月からピアノを始めたRちゃんはリズム感がとてもよくて、身の回りのものの名前でリズム打ちをしています。
今日は食べ物の名前でリズム打ち。
「ホットケーキ」「ハンバーガー」「だんご」「クリームシチュー」「やきざかな」…。
Rちゃんは、小さな「ッ」や伸ばす音「ー」のリズムもしっかり感じ取ってリズム打ちしています。
そして音符のカードでリズムを再現して、楽譜に抵抗なく取り組んでいけるように導いています。
11月から、しかも今週からピアノを始めたYちゃんには、まず「ド」の場所を覚えてもらいました。
ピアノの先生仲間から教えてもらったアイデアを使わせていただいています。
黒鍵の2つ並んでいるところにサクランボ、3つ並んでいるところに三色団子のカードをのせていきます。教室のピアノには、「ド」の鍵盤にシールを貼ったりできないので…。でもそれを目印にすると「ド」の場所も覚えやすいようです。
でも、せっかくこんなにたくさんの鍵盤があるのに、「ド」しか弾かないなんてつまらないですよね。
端から端まで全部の音を弾いてもらいました。
年長さんのMちゃんはもうすぐ小学生なので、ひらがなを書く練習も兼ねて、楽譜を読む時に音符の上に「どれみ」を書きこんでいます。「どれみ」を書くと音符を読まなくなる…という意見もありますが、私の経験では、たいていのお子さんはそんなことはありません。一度は自分でしっかり音符を読んでいますし、家での練習も嫌にならずにできるようです。
でも、「れ」「み」「ふぁ」など書くのが難しいひらがなが多く出てくるので、ちょっと大変そうです。
Mちゃんは、「みみみ」と「み」が3回連続して出てきたところで、2番目の「み」だけ小さく書いていました。そのあとピアノで弾くと…2番目の「み」はとても小さな音で弾いていました! なるほどなぁ…と子どもの感性には驚かされ、私も楽しませてもらっています。
同じく年長さんのKくんは、音符を読むことと並行して、即興演奏を楽しんでいます。
これまで「おてんきものがたり」「どうぶつになろう」など絵を見ながらピアノを弾いてきましたが、この前のレッスンでは、「ちょっと思いついちゃった!」と言って弾き歌いを始めました。
はたから見るとメチャクチャに弾いているように見えるかもしれませんが、激しい音や優しい音、ゆっくりになったり細かい動きになったりと変化に富んだ曲で、曲の最後は、ちゃんと「終わるような感じ」で終わるんですよ。
しかも5分近くの大曲で、すごい集中力です!
幼児さんだけでなく身体が小さいうちは指の力も弱いですし、大きな音を出したりすばやく指を動かすことも難しいです。でも、「こんな風に弾きたい!」というイメージはしっかりと持っているんだな…と感心します。だんだんとテクニックが身についてきたら、イメージと演奏が結びついていきます。
幼児さんから小学生低学年のうちはこんな風に自由な演奏をしてくれますが、高学年になるとだんだん「正しいこと」を学んできて、こじんまりしてきます。
こんな風におおらかで自由なピアノはこの時期だけのものなので、私は大事にしていきたいです。
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ピアノを習い始めてずいぶん経つのに、うちの子はなかなかスラスラ弾けるようにならないわ…と思われることもあるかもしれませんが、もうしばらく見守ってくださいね。
ドレミで歌ったりリズム打ちをしたり、身体全体を使って踊ったり…。
音符を書いたり色をぬったり…。
これらのことがピアノを弾くことに結びついていきます。
今は、いわばコップに水を注いでいる時期で、あふれ出てくる時が必ず来ます。
コップの大きさも注ぐ水の量も、お子さんによって違っています。
ピアノに関してだけではなくて、子どもの成長のいろいろなことに共通しているかもしれません。
いつ、あふれるようにピアノを弾き出すか…こんなところが、幼児さんのレッスンの楽しみなところです。
お子さんと、初めてピアノに触れる最初の一歩からお付き合いできて、私は幸せです。
30分の短いレッスンですが、しっかりと1対1で向き合っています。